売上はあるのに、なぜ金が残らない?

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梅木 今回はですね、若手の経営者の方、または後継者の方々からよく聞かれる質問についてお答えいただきたいと思っております。まず最初の質問なんですけども、売上というものを目標に事業をしている、商品をたくさん売っていこうというふうにしている方が多いんですけど、やっぱり売上を目標にするというのがまず正しいのかどうなのか、売上をKPIにしていいんだろうかということをよく耳にしますが、この点いかがでしょうか。

首藤 売上をKPIにする場合はですね、やっぱり粗利率が最低限ここ以下っていうのがないよというところが決まっていればですね、まだ救われる部分もありますけども、大概の商売をされていらっしゃるところというのは、粗利率というのがたくさんあったり、またはあんまりなかったりっていうところを営業マンサイドに任せているというところっていうのも多いというふうに思っています。

そうすると、売上目標は達成しているけれども、実際は粗利率、例えば25%の年間粗利率を達成しようと思ってる、そういうところが売上が100%入っているけれども、実は粗利率を計算してみたら20%しかない。そういうふうになれば、当然利益が毀損されているわけですから、そういったものがあって利益が出ないというようなことというのがあります。売上自体はですね、KPIにするというのは結構危険かなというふうに思います。

梅木 ありがとうございます。それで、売上より利益というのがわかるんですけど、利益はだいたい3%とか2%とかですね、数100万出ていたらOKだっていうようなこともあって、先代の社長からもそう言われるというような声があるんですけど、これをちょっとそのまま受け止めていいのかどうなのかっていうところ、この点どうでしょうか。

首藤 営業利益率なり経常利益率なりですね、税引き前利益率なり、それらはだいたい一緒として考えて、3~5%というのが一つの指標にはなっています。これって多分ですね、戦後の高度経済成長の時にできたような指標なんじゃないかなと思います。非常に市場がですね、どんどんどんどん大きくなっていって、今年の売上よりも必ず売上が上がっていく。10%程度の成長が何もしなくてもできるというような環境であればですね、3%から5%ぐらいの利益率でも、なんとか資金繰りも回っていきますし、問題も解決できるというようなことが考えられると思います。

ただし、この低成長時代になってからですね、まして今の会社のプロポーション、自分のみなさんの会社自体が、例えば自己資本比率が50%も60%も70%もあるような企業が3%の税引き前で戦っていくのと、自己資本比率が10%を切るような、そういうような会社が3%から5%の利益率で戦っていくというのでは全く話が違って、多分どっちが多いかというと、自己資本比率があんまり高くない会社が、それをまた利益率もあんまり高くないような目標を立てて動いていらっしゃる。

そうすると何が問題かというと、まずは従業員に対する福利厚生を上げていけない。特に今、リクルートが問題になっていますけれども、リクルートに対して給与であるとか、お休みを増やすだとか、あと福利厚生施設を充実させるだとか、そういうことが全く手を打てなくなるというところが問題かなというふうに思っています。

梅木 ありがとうございます。やっぱり利益をとっていくということが大事だというのがよくわかりました。とは言えなんですけども、実際にどこが儲かっていて、どの商品が儲かっていてとかですね、そういったいわゆる利益の構造というところが実際つかめてない場合が多いんですけど、まず何から手をつけたらいいというふうにお考えですか?

首藤 まず、大概の会社がデジタルで管理している部分はあるはずなんですね。例えば、お客さんごとの売上があったりとか、お客さんごとの品目ごとの担当者別ごとの売上表があったりとか、もしかするとそこに計算上の原価が入っていたりだとか、そういうような基礎的なデータがあるはずなので、それをですね、ピボットテーブルとかで分析して、パレート分析図とかいうような形に見直してみることによって、例えばお客さん別であっても、お客さん別、担当別であっても、お客さんで担当別、商品別であっても、そういうところで粗利がどのぐらい違うのかということがわかってくると思います。

まずはできるところからですね、自分の手持ちのデータでできるところから分析をするというのが一番大切です。できもしないようなデータを時間とか手間暇かけて作って、それが結局は分析できずに、なんの対策も打てなかったというのは完全な浪費でしかありませんから、まずは自分たちが持っているデータの上でどんな分析ができるのか、仮説とともにちょっと動けるというようなところを考えられたらいいと思います。

梅木 ありがとうございます。最後に、売上と利益のところで利益の重要性がわかったところなんですけども、やっぱり利益と比べて売上っていうのは、利益率10%だとしたら、数字としては売上は10倍の数字が出てくるので、頑張っている感とかですね、自分自身が気持ちの上でもわかりやすかったりっていうところがあって、どうしても利益っていうのをインパクトとして、自分自身として考えにくいっていう気持ちというか、想いっていうのにどうしてもなってしまうところがあるんですが、その辺の意義みたいなところをですね、利益を見ることがすごく大切なことなんだとか、そういったような気持ちになかなかなれないんですけど、その点について何かご助言いただければと思います。

首藤 やっぱり売上至上主義になりやすいというのは、いろんなことがありますけども、やっぱり見えやすいということですよね、計算しやすい。売上っていうのは請求する金額でもありますから、それは財務会計から税務会計においても同じ数字が動いていきます。

ですから、年間締めた時に、売上は前年対比でどのぐらいになったかというのはすぐわかるし、それが増えていればやっぱり嬉しいし、やっぱり桁数が違うのでですね、10億だとか何億だとか、もっと言えば100億だとか、そういうような売上っていうのはもう気持ち、マインドにものすごく直結してきますね。例えば大分県でも、最近もうちょっと少なくなったなと思うんですけれども、以前は100億以上の企業っていうのは合同新聞で1年に1回発表されていました。そういうふうに100億企業というのが一つのステータスになるわけですから、100億目指そうみたいな気持ちになるのは間違いないですね。

だけど、じゃあ100億企業がどれだけ利益を出してるのかというのは誰も見てくれてませんから。そのずっと前は税務署がたしか4,000万くらいだったと思いますけど4,000万以上の納税者、高額納税者っていうのは発表していたので、ここはこれくらい納税してるのかなというようなところがわかってました。

今はもう全く何もわかりませんから、よっぽど信用調査機関でも調べない限りわからない。だから、どうしても外形上を見えてくるのは売上、なおかつ売上が増えるほど社員が増えていきますから、うちのグループは社員数は100名なんだ200名なんだ300名なんだというのはもうステイタスに直結していきますので、そういったところに目が向きやすいっていうのは非常にわかります。ですから、ある意味仕方ないのかなというようなところはあると思います。

梅木 ありがとうございます。じゃあ、利益の重要性をどう受け止めたらいいですか。利益を出すことが売上よりも大切だというのは、どんな意義とか意味というふうに解釈したらいいんでしょうか。

首藤 結局、潰れない限りと言ったら悪いですけれども、普通の会社もちゃんとやっていれば潰れないというか、潰れないことを前提に作っていくわけですけれども、やはり例えば皆さんが親の代から自分が継承して、例えばそれが40歳だとして、大体今の感じだと30年間ぐらいは経営されると思うんですね。

それが20年間かもしれません。その時に毎年毎年内部留保をどのぐらい貯めているのかっていうのが、その会社の自分が30年間経営したその会社の価値を決めるわけですね。その時に売上が伸びて、利益ももっともっと伸びたなというようなことに越したことはないわけですけど、売上は10倍になりました。

だけど、利益水準はほぼあんまり変わりませんみたいなことをやってたら、結局社員数が多くなって、リスクは増えるのに、利益はあんまりない。そうすると、何か経済的なクラッシュ、例えば2020年のコロナだとか、2011年の東北の大震災だとか、2007年のリーマンショックだとか、そういうものが起こってしまったら、本当に一瞬で自分のビジネスというのが、もしかすると倒産するかもしれない。

そこを倒産を回避できる唯一のものっていうのは、内部留保、自己資本率。それをなおかつキャッシュで持っておくということですから、そういった意味で皆さんも生命保険かけると思いますけれども、生命保険かけてるお金があるんだったら、少しでも利益率を高めて1年の売上に対して最低限10%以上の税引き前利益が出るような、そういう経営を目指していただきたいというふうに思います。

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