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いつか現れる「右腕」を、ただ待ち続けますか?
梅木 それでは今回の塾長から経営に関するノウハウ、考え方ということを教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。今回のテーマは幹部育成というところですけれども、ナンバー2というところをメインに焦点を当てて塾長からお伺いしていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。
ナンバー2というのはよく経営者、経営者候補の方、後継者の方々からよく「ナンバー2がいてくれたらなあ」という声をよく耳にいたします。そもそも待っててもといいますか、ナンバー2と呼べるような存在というのは現れるものなのだろうかということについて、塾長からお考えをよろしくお願いします。
首藤 ナンバー2と言ってもですね、物理的なナンバー2というのと、理想的なナンバー2、社長がですね、特に自分の役割を補完するようなナンバー2というようなところがあると思うのですけれども、物理的なナンバー2というのは、ある意味つくろうと思えばつくれると思うんで、社内からだとか社外だとか、よくあるのは、社長が社外から招聘してナンバー2に据える、置くというようなことというのはよく聞きます。
ただ、社長が夢見る理想のナンバー2というのはなかなか現れない、というか、そもそももし現れたとしても必然的にその方は去っていく。なぜかっていうと、社長が夢見るんだから、社長より能力が上というような既定になるんだろうと思うんで、そうするとですね、やはりその能力が高い人が低い人についていくということ自体おかしい話になるんで、そういう意味では、社長はナンバー2は現れないと思ってやっていく方がいいんじゃないかなと思います。
梅木 現実的に考えていくと、ナンバー2というところは難しいですね。それでも社内にナンバー2、右腕と呼ばれる方ですね、自分の次に置く人を社内から登用するにせよ置きたいという場面がくるかと思いますが、そもそもおいた方がいいのか、または置くことによるリスクであったりというところについてはいかがでしょうか。
首藤 やはり会社というのは永続性、ゴーイングコンサーンというふうに言われますから、もしトップが何かことがあってもですね、中断するわけにはいきませんので、そういった経営の連続性だとか永続性だとかということを考えると、当然ナンバーワンの次にはナンバー2という方がいらっしゃって、もしナンバーワンが何かあってもナンバー2がナンバー1になる。もしくはナンバー1、ナンバー2、ナンバー3というのがいてという方が対外的にも対内的にも安心感があるというふうに思いますし、実務的にもですね、社長が全員に対してコミュニケーションをとる、もしくは全員と会話を通じて意思疎通を図り、意思決定をしていくというのは、数人の会社ではできますけれども、もう数十人になるだけでもほぼほぼできません。
そういった意味では、ナンバー2の方が社内の取りまとめだとか、または社長と方針について相談するだとか、そういった意味ではですね、いた方が社長としてもやりやすいですし、対内的にも対外的にもナンバー2の意義というのはあると思います。
ただし、じゃあナンバー2がいたらいいのかというと反語的になりますけれども、できるナンバー2であればあるほどリスクは高くなるということが言えると思います。例えば、営業が得意なナンバー2だとか、逆に内務系が強いナンバー2だとか、いろいろなカラーがあると思いますけれども、そのナンバー2の方がもしかして退職したらどうなるのか、このリスクをどのぐらい社長が考えていらっしゃるのか、また、会社が会社としてどのぐらいリスクを考えているのかということは、きちんと織り込んで対応していかないと、終わってしまってからですね、そういう困った事態になってから対応するということは防がなきゃいけないなと思います。
ただ、皆さんもご存じのように、まれにうまくいくこともありますし、逆に言うと、規模的な成長しようと思うと、ナンバー2の役割というのは大きいかもしれないですね。例えば、松下幸之助さんと高橋荒太郎さんだとか、本田宗一郎さんと藤沢武夫さんだとか、そういうナンバー1、ナンバー2コンビで会社を大きくしたという例もあります。そういう意味では、中小企業ではナンバー2を1人だけつくるのではなくて、できたら3人以上ですね、同時に頼れる人をつくっていって、横並びである意味競わせながら、もしくはリスクを分散しながら進めていく方が現実的かなというふうに考えます。
梅木 ナンバー2と聞くと、1名だと勝手に思い込んでしまうんですが、数名、3名というようなところは目からウロコなのではないかなというふうに思います。最後になんですけれども、ナンバー2といいますか、経営幹部ですね、幹部を育成していく上でのノウハウとして代表的なものを教えていただければと思います。
首藤 社長にもいろいろなタイプがいますけれども、やはり勉強好きな社長というか、外部の研修団体だとか、もしくは外部の方といろいろと切磋琢磨して、自分の会社に無いもの、または自分の会社がやるべきことみたいなことを考えながら進めていくというのは、成長を志す社長としてはある意味当たり前の行為かなと思いますけれども、社長が外でいろいろな刺激を受けて、これはいいから会社に持って帰ってやってみよう、やらせてみようというように思うのは自然なんですけれども、ぜひそのときに、やはり幹部にも同じような体験をさせてもらいたいということですね。
自分がこういう会社になってほしいというモデルケースみたいな会社があるんだったらですね、幹部とともにその会社に勉強会をお願いして見学に行かせていただいたり、もしくは自分が参加していい勉強だったなというふうに思うような勉強会があるのであれば、そちらにも幹部を研修を受けさせるというようなことをまずやってもらう。
当然、社長と幹部では感受性が違ったりだとか、実行力が違ったりだとか、決断力が違ったり、もう当然違うわけですけれども、だけれどもある程度同じような経験をするだけでも以心伝心というのは起こり得ることですから、ぜひそういうような体験をさせてほしいというのがまず第1点。
それから、幹部に登用する手前のところかもしれませんけど、任せたらね、やっぱ変な話失敗するまで放任することですよ。相手が、幹部の方が頼ってきたらですね、ちゃんと親身になって対応すればいいと思いますけど、任せたつもりになっていて、または辞令的にはもう任せましたよと言っておいて、実は細かい報告を定期的に要求したりだとかですね、もしくはサジェスチョンまでしたりとか、そういうことをすると、もうせっかく任せたつもり、もしくは任せようと思って幹部に育てようと思っているのが、本当に芽を摘んでしまって、しなきゃよかったというようなことにもつながると思います。そういった意味で言えばですね、小規模の経営をまずは任せてみる、自分の関係の会社に小規模な企業体、もしくは企業部署みたいなものをつくって経営を体験させるということは大切なポイントですね。
または、鉄火場に放り込むという、例えば大きなクレームだとかですね、価格交渉だとか、いろいろな鉄火場があると思いますけれども、また、従業員さんとの折衝だとか、そういうところに放り込んで、結果を出すまで放っておくというようなことも、胆力を鍛える上では非常に大切なことかもしれません。
もう一つは、ある意味、その組織の中であんまり使い映えが無い、もしくは問題児であるとか、そういう人を部下につけてみて、どんな対応をするのかというようなことを見たり、もしくはその手を焼く部下を持つことによって、その幹部候補生が幹部としての成長を見るというようなこともあります。
逆にいうと、いい部下を持っていて成長してきた幹部というのはある意味当たり前なのでですね、本当に必要な、今できていない人を何とかできるようにする、何とかするというような機能というものがなくなっていきそうなので、そういう鉄火場だとか、あんまりできない社員さんだとか、そういうようなところを経験させるというのは大切なことです。
梅木 ありがとうございます。今回は幹部育成ということで、ナンバー2の当然ながらリスクというところも含めて、そして幹部を育成するための具体的なノウハウについて教えていただきました。