建設業はなぜ儲からないのか?

はじめに

「日刊大分建設新聞」という新聞があります。

日刊と謳っているので、毎日発行しているのかと思えば、火曜日から土曜日までの週5日の発刊のようです。

この「大分建設新聞」2021/10/12号に「約4割がSDG’sに対応」と全国建設業協会が、行ったアンケート結果からトップ記事として取り扱っています。

すでに行動している企業が23.2%、行動を検討している企業が17%を占め、約4割が前向きに行動していることを取り扱っています。

一方、2020年の建設業の赤字率は58.5%と半数以上が赤字の状態で、業界の健全性を著しく毀損しています。今回「建設業はなぜ儲からないのか?」というテーマに基づいて考えたいと思います。

首藤の経験では

建設業は請負契約なので、初めに売価が決まって、あとで原価が出てきます。小売業や製造業は、まず原価があって、売価を決めます。

この特殊性を理解しないまま、経営を行なっている建設業者が多く存在することは事実です。これは、建設業界の風土というか、歴史にも関係していて、改善するには根深い問題を孕んでいます。

次に問題なのは、未成工事支出金という科目の存在です。建設業では、工事が数ヶ月から数年にわたるために、工事完成時に決算するための便法として、完成していない工事使った材料費や外注費、担当の人件費、一般管理費などを支出時に未成工事支出金という資産科目に紐づけることが行われています。

現場ごとの予算進捗を適正に行なっていれば良いのですが、現場をよく知る管理者や職人は現場の完成に感けて、数字の積算やチェックを等閑にしています。そして、経営者や数値管理者は、現場の担当者の顔色を伺ったり、リアルタイムや正確に把握できない利益をよそに、売上だけの経営管理に走ってしまいます。

また、決算時に赤字の場合、公共事業受注のために、粉飾をする傾向があり、その温床として未成工事支出金が使われます。

Webで検索すると、中西宏一さんが建設会社が儲からない理由を下記の5つにまとめています。

  1. 会社の純利益が著しく低い(経営者や幹部が売上しか意識していない)
  2. 利益が出ない年度には数字操作を行う(経営事項審査の点数維持や銀行の目を逃れるための粉飾も)
  3. 会社全体で利益を上げる意識が薄い(実行予算書は存在するものの、正しく機能していない)
  4. 社内のコミュニケーションが取れていない(営業は受注のみに走り、現場は納品及び現場完成のみに走る)
  5. 余計なことに時間と手間をかけすぎる(意味のない社内手続きや経費削減には熱心)

以上の切り口も大変わかりやすいと思います。

歴史的に見れば

そもそも建設業は歴史を振り返ると、時の権力者がその権勢を誇示するための建造物を構築するために生まれたものです。ですから、完成が求められているだけで、予算としては、概算があるくらいで、出来上がるまで、依頼者である権力者が資金を投入してきたのです。

その風潮は江戸時代から明治時代にも色濃く残り、民家でも、権門勢家では、予算など無しにかかるだけかけて、邸宅を建立したものです。

流石に、令和の現代では、事前の契約無しに発注したり受注したりすることはないのですが、建築という特性から、設計段階ではわからなかったり、間違えていたものや、施主の気持ちが変わったものなど、想定以外の変更は当たり前に行われています。

現場と経営者とのコミュニケーションが成立していない場合、現場は施工を、経営者は売上を、それぞれ別の立場で追いかけるものですから、全くの赤字になる現場が頻出するわけです。

では、どのようにすれば良いのか?

私の経験では、建設業が適正な利益を確保するためには、KPI(Key Performance Indicator)(重要業績評価指標)を明らかにして全社員で周知徹底することだと思っています。基本的に、現場単位の予算決算を必ず行い、最低限月次単位でそれぞれの進捗を数値化して管理することです。

この場合間違いやすいポイントは、正確性を犠牲にするということです。数字は唯一無二なので、ついつい経営者は間違った数字を過大に責め立てます。ほとんどの現場が、数十万円から数億円までの高額な取引ですから、大切なことは即時性や随時性であって、正確性などは二の次で結構です。

予算書を元にして、実行予算を作成し、その進捗を大まかなカテゴリーである支払い先ごとくらいの科目の中で数値管理していきます。外注の職人が多く関与する場合には、出面を管理していきましょう。

「儲からない」理由がわかれば・・・

以上、「建設業はなぜ儲からないのか?」についてご説明してきました。

逆にいえば、儲からないポイントがわかれば対処できるということです。

私は、これまでのコンサルティング経験で、建設業種の経営改善を十数社実行してきました。この文章だけではわかりにくいものなどは、お気軽にご相談ください。

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