建設業界とウクライナ危機

はじめに

2022年2月から始まった「ウクライナ危機」は、世界の秩序と経済にとって大きなインパクトを与えました。第2次世界大戦終結以降、最大級と言って良いこの侵略は、今後の展開次第では、第3次世界大戦の幕開けと言っても過言ではないのかもしれません。

将来的にはなんらかの落ち着きを見せ、新しい秩序が生まれ、経済の発展も約束されているのかもしれませんが、現時点から2022年や2023年に向けて、私たちの建設業界が、考え、対応しなければならないポイントを考察したいと思います。

2022年2月28日の日経新聞では

トップに「国際決済網 ロシア排除」と銘打ち、「数日中に米欧、中銀にも制裁」とし、米欧カナダの6カ国と欧州連合(EU)は、26日、ロシアに追加制裁する方針を表明した。ロシアの中央銀行に初めて制裁を科し、ロシアの外貨準備を使えなくして通貨ルーブルの防衛を困難にする狙いだ。後略
ロシアの持つ外貨準備は6300億ドル(約73兆円)で、うちドルやユーロなどの外貨が5000億ドル分あり、資産凍結などの制裁対象になる。中略、金は1300億ドル分あり、ロシア国内で保管しているとみられる。

と報じています。

つまり

通常行われている自国通貨の安定に対応する外貨準備の6300億ドル中5000億ドル(約80%)が利用できず、また国内保有の1300億ドル分の金も常識的には売買不能となり、「全面的に通貨であるルーブルの下落を止める手段がない」という状況にロシアは追い込まれるということです。

この状況を受けて私たちは

将来を見通すことはできませんが、なんらかのリスクを考えることはできます。ポイントは、サプライチェーンと金融です。

つまり、物の流れのリスクとお金の流れのリスクです。

この両面に対して、私たちができることを考えていきたいと思います。

サプライチェーンでは

建築の部材におけるサプライチェーンにロシアがどれほどの影響を持つのか?という疑問には、一定程度以上の見方として、直接的な影響は薄いだろうということです。エネルギーや希少金属などは不安材料ですが、建築の部材にとってロシアは、あまり重要な関係国ではないと思われています。

しかし、「風が吹けば桶屋が儲かる」ということもありますから、建築業界としては、部材の急騰に対応する契約書の締結は、必ず必要になります。見積時点よりも10%以上の単価の高騰があれば、高騰分を上乗せできる契約を締結するべきです。

また、見積から着工までの期間に相応の時間が必要な業界ですから、見積時点での、確認書の提出などにおける高騰分の補填の前提の周知徹底も必要です。

「転ばぬ先の杖」ですから、何事もないように、事前の確認が重要になります。

金融では

将来の金利高騰が現実化しています。

また、このような不安要素があるときは、流動性を高めることが重要になります。

具体的には、メインバンクやサブなどの金融機関から、中長期の運転資金の調達を実施しましょう。

目安として、年商程度の現預金の確保を目指し、最低限6ヶ月分の現預金を調達しましょう。

多少金利を払いますが、この低金利時代では、大したコストにはなりません。保険料と思って調達しましょう。

おわりに

世の中は常に流動しています。

今回のような世界的な動きには、様々な変化が起こります。

その中で必要なことは、私たちにとって、短期的から中期的にどのようなリスクとチャンスがあるのか?という視点です。

冷静に分析しつつ、周知を得て、信念を持った行動を実施しましょう。

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