建設業の資本政策

はじめに

建設業を営む多くの会社は、株式会社の組織になっているとおもいます。

創業当初は、あまり気にもしないと思いますが、10年が過ぎ、内部留保が高まっていくと「株価」というものを意識するようになります。

そもそも、創業時に「株式をどのように保有するのか?」または、「誰からどれくらいの出資をお願いするのか?」という問題に正面から立ち向かっていれば良いのですが、多くの経営者は、株式の保有などに意識を向けず、ただ目の前の仕事の獲得や竣工を目指します。

「建設業界における資本政策とは?」について、まずは、M&Aを題材に考えてみます。

本日(2021/11/8)の日経新聞には

第2面に「関西スーパー争奪戦」と銘打って10月29日に臨時株主総会にてH2Oリテーリング感化のスーパーとの経営統合を決議した過程を報道しています。

仕入れ先に株式をお願いしていた関係上、事前に買収提案を行っていた横浜市のオーケーとの選択は、株式数や企業価値と言った側面から非常に難しく、危ういものであったことが表現されています。

現実に、決議には三分の2以上の賛成株数が必要でしたが、賛否が競り合った結果、賛成比率はわずか0.02ポイント上回る66.68%と、日本企業の歴史に残る総会となりました。

株数と株価

株式会社は、商法や会社法によって、何かを決定するときの賛成株数や株数ごとの権利が規定されています。

今回の関西スーパーの経営統合などの重要事項については三分の2以上の賛成が必要と規定されていますから、経営主体として株式を保有する場合は、まずは三分の2以上の保有を目指すのが、一般的と言えます。

また少数株主を守るための会計帳簿閲覧謄写請求権というのがあって、会社の会計書類を見たりコピーしたりする権利は、3%以上の保有があれば請求することができます。

ですから、株式の3%以上を経営主体以外の第三者に出資してもらうのであれば、経営の透明度は上場企業並みのコンプライアンスとガバナンスが求められると思った方が良いでしょう。

ということは、自由に経営をしたいのであれば、社長本人がすべての株式を保有することが一番容易な方法だということです。しかし、会社を大きくするとか、社員持株会をつくって社員の経営参画をお願いするとかの大きな方針があるのであれば、その方向性を担保するための資本政策というものが必要になります。

また、株価は、自己資本の蓄積により高騰していきます。

いずれにせよ、未来永劫にわたり経営していくことは不可能ですから、いずれは、誰かに株式を譲渡することになります。それが相続だったり、M&Aであったりするわけです。

もしも100%の株主である場合

建設業を営み、株式会社を組織し、その経営者として100%の株式を保有している場合ですが、経営者としての出口戦略を明確にして、次の行動のための資本政策が必要になります。

今回はM&Aを考えていきます。

この場合、売却することを前提としたM&Aなので、「いかに高く」「いかに公正に」「いかにわかりやすく」という視点で考えたいと思います。

M&Aの場合、何かの正解があるかというと、そうではなく、何事も相対の結果であることを前提として考える必要があります。ですから、これからの考察も決定的なものではないことを考慮してください。

「いかに高く」とは、自己資本をどのくらい積み上げるか?ということに他なりません。そして「いかに公正か」と「いかにわかりやすく」という意味では、資産と負債を明確にすることです。

資産側では、不動産や投資などの固定資産をなるべく減らし、流動資産の中の現預金以外のものもできるだけゼロにすることです。
負債側でも、銀行借入以外の負債をなるべく減らすことです。

必要であれば、土地建物などの資産は、資産管理会社に所有を移すことも視野に入れるべきかもしれません。

あとは、売却時期や引き渡し時期、退職時期などを決めた上で、税理士と退職金の取り扱いについて協議すれば、節税的な行動も取れます。

まとめ

株式会社は、変化することを前提に考えられた仕組みです。ですから、自社の最大の変化をシミュレーションすることは、とても重要なことになります。
特に建設業は、歴史があり、内部留保が積み上がっている会社が多く、そしてその承継が課題である場合もたくさんあります。
つねにM&Aで売却することをイメージして、そのシミュレーションを毎年行うことで、自社の経営をブラッシュアップすることができます。
まずは、計画を作ってみることですね。

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